8月26日 野田村の野田中学校1年の皆さんと一緒に、野田漁港を見下ろす断崖「大唐の倉」を観察したんですが、今から約830年前の平安末期、中国「宋」の浙江省啊育王山から日本を目指した船が漂着し、唐人僧珊光国師と平重盛の二庶子が断崖の倉に上陸、珊光国師は現在の曹洞宗寺院「海蔵院」開祖となりました。
大陸の中国を指す「唐」と断崖を現す「倉」から、白い堆積地層も目に鮮やかな野田漁港の断崖は「大唐の倉」と呼ばれることとなりました。
ここは野田層群という新生代古第三紀の地層で、漸新世(約3,390万年~2,303万年前)に形成とされていました。
この野田層群港層は、大きな丸い礫岩や砂岩、泥岩、きめ細かいシルト、炭化物の層・石炭層などの堆積サイクルで構成されています。
この中のひときわ目立つ白く厚い地層は砂岩~火山灰~砂質凝灰岩などで出来ています。
このサイクルは北側の久喜層も含め、大きく4回の堆積が繰り返されています。
火山灰については、1995年以降東京学芸大学附属国際中等教育学校・堀内順治博士らの研究により、堆積年代が約6,340万年前というフィッショントラック方分析結果が明らかになっています。(1995堀内、2009堀内&植村、2017堀内&植村)
この結果、野田層群港層は古第三紀暁新世~中期始新世(約6550万年~4130万年前)頃、久喜層は後期始新世(約4130万年~3390万年前)以降と推定される。もちろん、或いは約1000万年ほどの地殻変動による欠落も考えられるとしている。
9月2日(月)第2回「ジオパーク授業」~大唐の倉の火山灰は、どんな火山灰なんだろう!ということで、採取した火山灰を顕微鏡観察です!なお比較のため、岩手山の雫石町採取火山灰も観察したんです!
大唐の倉の白い「砂質凝灰岩」を何度も水洗いして、泥などの汚れを落とし、乾燥させたものを顕微鏡で観察、含まれている物の種類や色あいを調べたのです。
その結果、石英や長石、火山ガラスなど透明なもの白っぽいものが、輝石や角閃石という黒っぽいものより多かったのです!
岩手山の今回雫石で採取した火山灰中には黒っぽいものが沢山あり、比較の結果大唐の倉の火山灰は粘り気の強い激しい火砕流や爆発を起こす火山から、岩手山の火山灰は溶岩流などを伴う粘り気の少ない高温火山からと推測されました。
最初は、泥っぽい汚れを含むものがあることから勘違いして黒っぽい破片に分けてしまったようです。でも、橋本先生の指摘でもう一度見直した結果「透明または白っぽい物の多い」結果となりました。
三陸沿岸では、北上高地に火山がなく、内陸の方が火山噴火の影響を受やけすいと思うんですが、それでも野田村米田浜で約7000年間に及ぶ「津波堆積物層序」を確認した北海道大学名誉教授・平川一臣先生、盛岡市立高校・小野寺弘幸教諭、岩手県博元学芸部長・大石雅之先生により、この堆積物層序中に「十和田a」「十和田中掫ちゅうせり」「十和田b」「白頭山」「姶良」などの火山灰が含まれていることがあり、ましてずっとずっと古い太古の時代にはもっと激しい火山噴火もあったようです。
9月2日、三陸ジオパークを活用したESD(持続可能な発展のための教育)授業~「大唐の倉」砂質凝灰岩層に含まれる火山灰の観察。
モデル授業に取組まれた野田中学校 橋本先生、子供たちの観察の様子は写真掲載できません~ご了承ください!
大唐の倉の白い砂質凝灰岩層~この中に火山灰が含まれている。
礫岩層の上に、遠くからでもはっきり判る、厚い堆積層!
静水に近いような状態で堆積していることが、きめ細かな縞模様~から判ります。
第2サイクル基底の大きな丸い礫岩層~かなり流れの強い流程の部分。東北東に10°位傾斜
北側から見た、おそらく第3サイクル基底礫層。このところ波が崖に迫り野田漁港まで、なかなか辿り着けません!
泥岩~シルトにトクサ類?の化石!
立木化石~珪化が始まっている?
堀内順治先生所蔵の野田層群港層 植物化石
炭化木が挟まっている!
白い堆積層に珍しく多めの炭化物
北側~野田村広内方向
波で削られ崩落した砂岩層に炭化物の混じった泥岩層あり
久喜漁港西 みちのく潮風トレイルの海成段丘登り坂~眺望十府ヶ浦・野田漁港・大唐の倉 (9月12日夕)
久慈市川貫の野田層群港層~炭化物の中に植物の葉が見える。
これを丁寧に分離するのは、た易くないことで~す!
* 参考:「小学館の図鑑NEO地球」P134 火山➁~火山の種類 (2016.05.03 第10版)
約6000万年前~日本列島はアジア大陸東端の一部でした!
「大唐の倉」の白い凝灰岩層に含まれる火山灰の由来については、宮古市浄土ヶ浜の流紋岩や宮古市閉伊崎の噴出岩類或いは三陸沖~日本海溝からなど、各種検討が続いています。
現時点では、「大唐の倉の火山灰」=約6340万年前と年代の一致する試料はありません!
火山灰~熔岩自体の比較試料を日本列島~古アジア大陸規模で比較研究する必要があるかもしれません。
中学1年の理科では、まだ地球のプレートが動き地震や火山噴火につながる事など、今後の学習になるようです。
モデル授業後のESD研究会では、県内中学高校の先生方、久慈管内教育委員会や県北教育事務所、県教育委員会、県立博物館、県環境生活部の職員さんも各々意見交換されていて、ジオパークを活用した持続可能な教育(ESD)について、総合的な学習などもっと相互に関連した学習を進めては~という感想もいただきました。
岩手県教委では、2015年発行で人気の高い「わく!わく!さんりくジオBOOK」について2020年度改訂版を再監修予定など、今後とも三陸ジオパーク普及啓発に協力してゆく旨、お話をいただきました。
わく!わく!さんりくジオBOOK 2015年初版
(企画発行:三陸ジオパーク推進協議会 協力監修:岩手県教育委員会および検討委員)
「地球全史スーパー年表」(部分)2014年第2冊 監修:日本地質学会 発行:岩波書店
* 9月2日㊊の「三陸ジオパークを活用したESDモデル授業研究会」~ジオパーク関係側からは、三陸ジオパーク推進協議会 杉本コーディネーター、林推進員、いわて復興応援隊・久慈駐在の町田・田高隊員、北三陸認定ジオガイドクラブ 島川(8月26日~大唐の倉現地観察案内、9月2日~ゲストティーチャー)、金久ジオガイド(補助)が参加し、今後の教育連携に期待を寄せました!
ご協力いただきました野田中学校校長先生、観察を担当した橋本先生他教職員の皆様、野田村教育委員会、野田村未来づくり推進課の担当職員さん、大変ありがとうございました。
三陸ジオパーク推進に当たって、今後ともご指導ご協力のほどよろしくお願いいたします!
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